現在、この世の中に打楽器と言える物が、いったいいくつ存在するのであろうか。
日常生活の中で叩けば音の出る物まで入れれば、世の中のすべての物が打楽器と言えよう。
打楽器が、リズム楽器であると共に、音色への関心、空間への興味へとその可能性を拡げてきている。現代の音楽において、打楽器の重要性はいまさら語るべくもなく、打楽器のみによる演奏会も、確固たる世界を築いてきている。
この作品で私は、マルチ打楽器による音色空間ではなく、むしろ単一の楽器により、あたかも音が見えるがごとく存在しうるか、と考えた。そして、打楽器の代表的存在であるティンパニーのみにより、視覚的時間 (OPTICAL TIME) 空間を形成しようと考えた。
この曲は、かなたから音の線として聞え始め、一つ一つの音は、互いに揺れあう群へと発展し、空間へと放射される。この“OPTICAL TIME”は、ティンパニーのペダルによる音程変化の、限界にまで挑戦しているが、演奏者の卓越した手さばきと共に、みごとな足さばき （ペダリング） も、すばらしい視覚的時間空間を生んでくれることと思う。

1987年 10月 松下 功


使用楽器
Timpani LL, L, M, S, SS

演奏時間 : 約15分

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